2020.05.14

The Burn 米澤シェフインタビュー前編 “サステナ・ヴィーガン”が食の喜びを未来に繋げる

ー多様性を受け入れ、ヴィーガンの入り口を広げる


僕がエグゼクティブ・シェフを務める青山のレストラン、「The Burn」の看板メニューは肉料理。僕自身、お肉が好きなので、炭火でグリルした国産牛の旨味をとことん味わってほしいと思っています。

しかし、そんな華々しい肉料理とともに、お客さんがこぞって絶賛してくれるのがヴィーガン料理です。有機人参ローストやカリフラワーステーキなど、ヴィーガン料理にあまり親しんでないお客さんは「なんでお野菜でこんな料理ができるの?」と驚きの表情で野菜の旨味を味わってくれます。
お肉好きな人が野菜のダイナミズムに衝撃を受けてくれたり、野菜好きな人が素材の滋味深さを再発見してくれたり。そんな新しい発見や奥深さがヴィーガン料理にはまだまだ残されているのだと思います。

ー時々ヴィーガンというニュームーブメント


ヴィーガンというとかなりストイックに生活しなくてはいけないように聞こえますよね。しかし僕が暮らしていたNYではみんなフレキシブル(柔軟)にヴィーガン食を取り入れていました。僕がスーシェフを務めていたNYのミシュラン三ツ星レストラン「Jean-Georges(ジャン・ジョルジュ)」にもヴィーガンのお客さんはいらっしゃいましたが、菜食だけど時々は肉魚も食べるといった“フレキシタリアン”や、週に何回かを菜食にしているといった“パートタイム・ヴィーガン”の人がほとんどでした。毎日ストイックにヴィーガンを実践するというより、フレキシブル、つまり時々ヴィーガンになる日を作るといった様子です。人間、無理をすると絶対に続かない。あくまで自分のライフスタイルの中に自分らしいヴィーガンを取り入れるからこそ、楽しんで続けられるのです。僕はそんなお客様たちの選択肢を狭めたくない。どんな食事を選択する人たちが来ても、即座に対応できるお店にしたい、そう思いヴィーガンメニューを考案しました。それが予想以上に反響が高くて。同業者である他店のシェフなどが食べに来てくれたりと、ヴィーガンへの関心の高さを改めて実感させられましたね。

 

ー「お客さんたちが住んでいる世界を知りたい」 美食の街NYへ


僕の料理人としてのスタートは、恵比寿のILBOCCARONE(イル・ボッカローネ)というイタリア料理店。最初はホール係としてお店に立ったのですが、当時そのお店のスタッフは英語はもちろんのこと、イタリア語も堪能なプロフェッショナルな人ばかりでした。海外からのお客様も多く、活気に満ち溢れたホールで働く中、僕自身も英語を勉強するようになりました。海外のお客様と話す楽しさ、気持ちが通じる嬉しさを実感するうち、「この人たちが住んでいる世界を知りたい」と海外への気持ちが強くなり、23歳のころ思い切ってお店を辞め、NYに単身渡米したんです。その時の所持金は35万。今考えれば無謀だったなと思います。

ー完全飛び込み、ただ働きからスタート


NYは絶品テイクアウトの屋台から、ミシュランの星がつくトップクラスのレストランまで、世界各国の味が揃う、まさに美食の街です。最新のトレンドを生み出し続けるNYで、料理人として再スタートした僕は、とにかくいろいろな店の門を叩きました。いわゆるスタジエ(研修生)というやつですね。そんな中、「Jean-Georges」で雇ってもらえることになりました。
「Jean-Georges」では料理はもちろんのこと、お客様への対応やコンセプトの作り方、また国や言語の違う人たちと働くためのコミュニケーション方法など、本当に多くのことを学びましたね。飛び込みのタダ働きから入った僕に、日本人初のスーシェフの役を任せてくれたのは、本当に光栄なことだなと思っています。
しかし、その一方で、僕が目指していたのは、もっとカジュアルに通える日常の風景の中にあるレストラン。「Jean-Georges」の芸術的な料理、洗練された雰囲気はここぞという勝負の日にはこれ以上ない演出をしてくれます。しかし、もっと気軽にお客さんに楽しんでもらえる空間を作りたい。そんな想いがあり、18年、『The Burn』をオープンしました。

米澤 文雄/The Burn

高校卒業後、恵比寿イタリアンレストランで4年間修業。2002年に単身でNYへ渡り、三ツ星レストラン「Jean-Georges」本店で日本人初のスー・シェフに抜擢。帰国後は日本国内の名店で総料理長を務める。「Jean-Georges」の日本進出を機に、レストランのシェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)に就任。2018年夏、「The Burn」料理長就任。コロナ危機の最前線で闘う医療従事者のため、トップシェフ達が料理を届けるプロジェクト「Smile Food Project」にも参加。

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