2020.07.23

目指すは圧倒的に美味しいヴィーガン料理 SHIORI さん前編

―“彼ごはん”に新たな風を吹き込んだ、フランスのファラフェルサンド

「作ってあげたい彼ごはん」シリーズは、大好きな人を料理で喜ばせたいという若い女性向けの料理本で、本当に多くの方に支持していただきました。当時は、主婦向けの料理本は多数あれど若い女性向けの料理本はひとつとしてありませんでした。実体験から女の子が料理を始めるきっかけは大好きな彼が出来た時!という確信を持ち、どうすれば若い男性に喜んでもらえる味になるのか、研究に研究を重ねた日々でした。食欲旺盛な男性を満足してもらう肉、魚でがっつり味のレシピを数多く考案し、日本で一番若い男性の胃袋をつかむ料理家になったという自負はあります。そんな私がヴィーガンのお店を作ることに至ったきっかけは、フランスでのヴィーガン食との出合いです。
8年位前になりますが、世界各国に料理の修行に出ていました。そんな中、パリの料理学校に1カ月くらいアパートメントを借りて住んでいたのですが、その時に食べたファラフェルの味に忘れられないほど衝撃を受けました。それまで肉、魚中心のがっつりとした料理を作っていたので、「野菜だけ」の料理はわたしの分野じゃないな……と少し距離を置いていました。しかし、初めて食べたファラフェルサンドはボリュームたっぷりな上、適度なジャンクもあって、「え? 野菜だけでこの満足感?」と、ただただ感動したのを覚えています。その時はヴィーガンという名前も知らなかったのですが、その「おいしい」という記憶が色濃く残り、それから世界各国を訪れるたびに「この土地のヴィーガンはどんなものだろう」と、色々食べ歩くようになったんです。海外のヴィーガンはバリエーションもある上に、プレゼンテーションも綺麗でとても刺激になりました。

―日常にヴィーガンがある心地よさを根付かせたい

日本でヴィーガンと聞くと、美意識が高い人や、健康志向の人が取り入れているイメージで、自分の食生活とは少し隔たりがある気がしていました。しかし、海外ではそのハードルがぐっと低いんですよね。ヴィーガンというものが、食の選択肢の一つとして自然にライフスタイルに溶け込んでいる。そこに住む人の日常の一つになっているということが、すごく心地いいなと感じました。そんな経験もあり、日本にもその心地よさがあればいいのに……、と思うようになりました。
ヴィーガンは100%植物性なので身体の健康維持にいいのはもちろんのこと、地球環境の負荷の低減など、いいことばかり、負の要素が見つかりません。ヨーロッパでは、小さな頃から環境保全に対する教育が盛んで、地球に優しい行動をするという思考が広く浸透しているという話を聞いたことがあり、納得しました。だからこそ、ヴィーガンに関しても積極的に取り入れることができるんですよね。日本でも野菜だけの食事が日常の風景に普通に存在し、それが結果として地球環境にもプラスに働くとなれば、こんないいことはないなと思います。

―必要なのは圧倒的においしいヴィーガン

しかし今の日本で、地球環境のため、動物愛護の観点からヴィーガン食を選択してもらうのは、非常に難しいなと感じます。教育や社会環境の差もあるかと思いますが、やはり日本のライフスタイルにヴィーガンを根付かせるためには、「圧倒的においしい」という体験を提供していかないといけません。日本人は世界でも有数のグルメ国。純粋においしいと思ってもらえることが、ヴィーガンがある暮らしを広める第一歩だと思うんです。
特に男性にとってヴィーガン料理は、一見、物足りなく感じると思います。でも、日本にヴィーガンを浸透させるなら、男性にも積極的に食べて欲しい。そんなとき、日本一、男性の胃袋をつかむレシピを研究してきた私なら、食べ盛りの男性をも納得させるヴィーガン料理ができるんじゃないか?むしろ、私が作らないといけないんじゃないか、という妙な使命感も湧いてきて、それが東京・中目黒にファラフェルサンド屋『Ballon(バロン)』を作った理由でもあります。

SHIORI/料理家

レシピ本『作ってあげたい彼ごはん』をはじめ、著書累計は400万部を超える。フランス・イタリア・タイ・ベトナム・台湾・香港・ポルトガル・スペインでの料理修行経験があり、和食にとどまらず世界各国の家庭料理を得意とする。中目黒で100%veganのファラフェルスタンド『Ballon』を経営する。
代官山のアトリエでは6年間料理教室『l’atelier de SHIORI』を主宰し、2020夏からはレッスンの場をオンラインへと移す。一児の母で、家族が喜ぶ家庭料理を幅広く提案している。

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